始発で宝塚に向かっております。

朝5時の駅には、意外に人がいるとも言えますが、やはり日中に比べると少ない。
みどりの窓口で並ぶことなく切符を購入できます。

そういえば、つい先週の日曜日も始発で大阪に行きました。
その時は女性の駅員さんでしたが、わたくし以外にも4〜5人のお客さんがいて、列の後ろからみていると、皆さん
『新大阪まで往復』
『京都まで往復』
などと、西日本のメジャーな都市に往復なさる方が多かった。
東京を始めとする東日本の都市名が出てこなかったのは、そのくらい距離を移動なさる場合、きっと皆様は飛行機を使われる。
ということは、佐賀駅のみどりの窓口を使う人は、京都、新大阪、新神戸のどこかが目的のお客さんが大多数を占めているのでしょう。

そんなお客さんが次から次へと並び、その受け渡しにひたすら忙殺されるみどりの窓口業務。


で、本日の駅員さん、わたくしが
『宝塚まで往復おねがいします』
と言うと、俄然モチベーションが上がったのが分かります。
わたくしの後ろに誰もいなかったのもあるかもしれませんが、昔ながらのボロボロになった時刻表の本を取り出し、せわしく机を指で叩きながら、もっとも早く、そして安く行けるルートを考えてくれます。
そんなに長い時間ではなかったのですが、一瞬の高揚感というか、明らかにテンションが上がっていらっしゃる。

『うーん。宝塚ってのはですねー、新大阪までの往復割引がありますので、その切符のまま宝塚まで行って、乗り越し精算なさるのが一番いいんじゃないかと思いますが、いかがでしょう』

まぁ、わたくしも素人ながら大阪市内往復切符だけ買って、そこから現地で乗換案内のアプリでも使いながら適当に行こう、くらいにぼんやり考えてましたので、
『はい、それでお願いします』
と即答。

キーボードを打つのの裏打ちで指で机を叩くのがクセなのか、阪神の掛布がバッターボックスでペロッと指を舐めたりするのと同じ、彼なりの調子の良い時のリズムの取り方かもしれません。
鉄道が好きでJRに就職したのか、JRに就職したから鉄道が好きになったのかわかりませんが、間違いなくこの駅員さんは鉄道が好きなのでしょう。



そういえば、どこの駅だったか忘れましたが、10年くらい前に、それこそみどりの窓口で、ちょっとマイナーな都市を複数経由して東京に行く、みたいな、ちょっと面倒くさい経路の切符を買ったことがあります。

それを窓口の人に伝えた時、小さい声で
『よっしゃ!ちょっとおもしろいのが来たぞ!』
とひとりごとを言いながらパソコンのモニターに向き直った人がいました。


やっぱり嬉しいんでしょう。


ほとんどのお客さんが
『東京まで』
『新大阪まで』
『博多まで』
という、ありきたりな買い物をする中で、この駅員さんにとっては、その時のわたくしの行程を一緒に考え、最善と思しきルートを提案することは、仕事人としての最高級の喜びだったのでしょう。


まさに仕事にいそしむ人です。


そういえば
『いそしむ』
という言葉は英訳ができないらしい。

聖書には、原罪を犯した人間に、神が罰として、男には労働の苦しみを、女には出産の苦しみを与えたとあります。
西洋人にとって労働は罰であり、決して楽しいものではない。

『いそしむ』という日本語は、仕事をやっていく中で、その仕事に喜びを見い出し、誇りを持って自発的に取り組む、ということを一単語で表したもので、英語には初めからその概念がない。

人間にとって最高の喜びとは、自分の行いが他人の役に立っていることを実感することに他ならないと言われています。

その喜びを味わったから、また仕事が楽しくなる。
だから、ますます仕事を頑張る。
それが『いそしむ』。


何か協力を得たい時は、いやいや仕事をやってる人よりも、仕事にいそしんでいる人に頼みたい。
みどりの窓口なんてまさに一期一会で、2度とあの駅員さんから切符を買うことはないかもしれません。

しかし、今日はあの駅員さんから切符を買ったおかげで、新幹線の中でもずっと幸せな気持ちが続いております。

いい旅をさせてもらってます。

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